legal office(法律事務所)に恋の罠
「和奏さんは何故、女性専任の弁護士に?」

「男性弁護士は多数おります。同じ女性にしか相談できないナイーブな問題。そういったケースの役に立ちたい、ただそれだけです」

和奏は運ばれてきたランチプレートの魚料理に手をつけながら、淡々と答えた。

「では、男性嫌いだから、という噂は嘘だと言うことですか?」

「いきなり不躾ですね,,,。まあ、完全に嘘、とは言いませんが、男性のケースを受けないのは本当です」

和奏は料理から視線を離して、奏を見つめて言った。

奏は真剣な顔をして続ける。

「お力を、貸して頂きたい,,,」

「無理ですね。今までも、これからも例外はありません」

「現に女性が困っていても、ですか?」

「,,,」

魅惑的な微笑みを浮かべて、顔の前で手を組むこの男性は、自分の魅力の見せ方を十分知っている。

「お話を伺うだけなら構いませんが」

ニコリと笑った奏の策略にズルズルと引きずり込まれていることに、この時の和奏は全く気づいていなかった。

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