legal office(法律事務所)に恋の罠
「直美、ありがとう」

「どういたしまして。こちらこそ助かった」

スーツの女性は、水谷直美27才、警視庁の人身安全対策チームに所属するキャリアだ。

ストレートの黒髪は肩の長さで切り揃えられている。

切れ長の目は彼女の聡明さを映し出し、凛とした佇まいは自信を現している。

知的なクールビューティーだ。

女性クライアントの離婚訴訟やDV相談に伴う捜査に協力関係になったことで、和奏と直美は顔見知りとなった。

特に、女性を守るという同じ目的を果たすために二人は意気投合。

どちらも自立した女性であり、社会的な地位もあり、仕事に誇りを持っている。

二人がプライベートでも仲良くなるのは必然だった。

「別室で待機して一部始終を見てたけど、相変わらずのアイアンフェースで怖いものなしね」

男の前では、鉄壁を誇る無表情を崩さない和奏。

そんな和奏を直美はアイアンフェースと言ってからかうことが多い。

仲川を挑発して現行犯逮捕に繋げるために、クライエントと警察には別室で待機してもらっていた。

備え付けのカメラで面談の一部始終をライブ中継して情報を共有していたのだ。
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