legal office(法律事務所)に恋の罠
「宇津井、弁護士ですか?」

「もしかして、宇津井に会ったんですか?アイツ・・・、僕が和奏と別れれば、二度と和奏に近づかないと約束したのに・・・」

小池は視線を漂わせると、悔しそうに呟いた。

「ええ、先日初めてお会いしました。和奏さんはその前にも、仕事で会ったことがあるようでしたね。私と一緒にいるのを見て、相変わらず、お金に目がない女だと彼女を罵っていました」

「くっ・・・!」

小池は悔しそうに拳を握って僅かに震えていた。

「まあ、私が少し脅しをかけたら簡単に怯んでいましたが」

「宇津井が、ですか?」

ああ、

と、嬉しそうに小池は天井を見上げて呟いた。

「あなたのような人が、彼女の側にいてくれるなんて、本当に神様はいるんですね」

その真意を聞き出そうと、奏が口を開きかけた瞬間、

無情にも入り口のドアがノックされる音が響いた。

「小池様、そろそろお迎えの時間です」

小池はソファに置いていたバッグを抱え上げると

「桜坂社長、時間を取れなくて申し訳ありません。詳しいお話ができなくて残念ですが、後は夢谷さんに聞いてください。彼女は、きっとあなたを頼りにするはずですよ、絶対」

小池は拳をギュッとつかむとガッツポーズをしておどけた。

「ただ、アイツは本当にしつこくて、悪どい・・・。だけど、あなたならきっと、夢谷さんを守れるはずです・・・」

そういい残して、小池は部屋を出ていった。
< 43 / 107 >

この作品をシェア

pagetop