legal office(法律事務所)に恋の罠
"念のために"

と、奏は和奏の部屋の前まで付き添ってくれた。

その時、玄関のドアノブには、見慣れぬ紙袋がぶら下がっており、

その中には、黒薔薇である

"ブラックバカラ"

が入っていた。

花言葉は、

"貴方はあくまでも私のもの"
"憎しみ、恨み"

差出人は書いてはいなかったが、おそらく宇津井だろう。

出所した将生を使ってこの花を届けさせたのか、自分で持ち込んだのかはわからない。

和奏は耐えきれずに、ズルズルとその場にしゃがみこんだ。

「和奏さん。今夜から、Hotel Blooming東京に、あなた用の部屋をとります。今から、数日分の荷物をまとめて」

和奏の両脇を支えて立ち上がらせた奏は、一緒に和奏の部屋に入ると、荷造りを手伝った。

「こんなこともなければ、ゆっくりと和奏さんの部屋を観察できたのに。勿体ないな」

奏の言葉に、和奏も苦笑する。

「ごめんなさい、迷惑ばかりかけて。本当ならお茶ぐらいだして、奏さんをもてなさなければならないところなのに・・・」

「いえ、状況が状況だから仕方ありませんよ。しかし、法律関係の本がたくさんあって和奏さんらしい部屋ですね」

"昨日が休みで掃除しておいて良かった"

と、和奏は思った。

「必要なものはホテルでも揃えさせます。まずは我が顧問弁護士であり、想い人でもある大切な女性の安全が第一だ。行きましょう」

予期せぬ宇津井と将生の襲撃により、

ボストンバッグとキャリーバッグを持って、和奏はHotel Blooming東京に向かうことになってしまった。
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