legal office(法律事務所)に恋の罠
ただ、林美麗の件については悪意以外の何物も感じられないし、詳細は本人が不在なのでまだわかってはいないと松尾は語った。

レセプション担当の美麗と社長の奏が、セクハラ被害のことをレセプションで話すわけにはいかないので、丸山は

「会議室で話せるように手配しました」

と語った。

奏は、男女が二人きりになることはセクハラ問題を話題にするのには不都合と考え、それまで丸山も同席させていたのだが、

この件に限っては、話の途中で丸山の携帯に内線での連絡が入り、丸山が会議室から出ていってしまう事態に陥ったのだ。

その途端、

美麗は中国語で何かを話しはじめ、徐に制服のボタンとスカートのホックを外し始めた。

慌ててそれを止めようとする奏の腕を美麗が引き、その拍子に、奏が壁に手をついたところで丸山が戻ってきた。

泣き出した美麗は、そのまま会議室を飛び出していった。

気不味い雰囲気が流れる会議室。

呆気に取られてしばらく立ち尽くしていた丸山だったが、

奏が淡々と先程までの状況を説明すると、納得いかない表情ながらも

"他言はしない"

と自分から約束してくれたのだ。

会議室を去った美麗は、乱れた衣服のまま泣きながら更衣室に戻ったのを同僚が目撃している。

美麗は、そのままロッカーに退職届けを残し、会社から姿を消した。

・・・以上が

奏の言い分だった。

< 81 / 107 >

この作品をシェア

pagetop