legal office(法律事務所)に恋の罠

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宇津井が弁護士司法試験に合格したのは1年3ヶ月前の9月。

同年11月から翌年11月末までの司法修習を得て、12月に2回の試験を受けた後に弁護士資格を得た。

今年の4月、宇津井が就職先に選んだのは、主に芸能事務所や娯楽業の顧問弁護士を担当する中堅の長谷川法律事務所だった。

宇津井は、大学院に助手として在籍していたため、4月採用となった。

先輩弁護士について、仲川芸能事務所の顧問弁護士となったが、ラグビーの時のように、司令塔になって主導権をとりたがる宇津井は、次第にスタンドプレーが多くなった。

3週間過ぎた今では、我が物顔で仲川芸能事務所に入り浸っており、長谷川法律事務所の方でも、宇津井の扱いに手をこまねいているらしい。

ちなみに、指導していた先輩弁護士は、すでに宇津井の指導担当も、仲川芸能事務所の顧問も下りたそうだ。

宇津井の長谷川法律事務所における試用期間は3ヶ月。

他に担当しているクライアントはいない。

山崎庄太郎は、将生が保釈された件に、宇津井が関わっていることを理由として、長谷川弁護士事務所へ連絡を入れた。

「長谷川先生、ご無沙汰しております。お宅の宇津井弁護士が担当している件でお話したいことがあります。お時間は頂けますでしょうか?」

長谷川社長は、

仲川将生が保釈された流れを知り、今日の17時に、Hotel Blooming東京の応接室に、宇津井と共に訪れることを約束してくれた。

「奏さんの写真がSNSやネットに拡散されたことではなく、仲川将生の件で二人を呼び出すのですか?」

和奏の質問に、庄太郎がニヤリと笑った。

「ああ、宇津井は、桜坂さんの件には一切関与していないというだろうし、何よりも宇津井をここに呼び出すことが一番の目的だから、理由はなんだっていいんだ」

奏もその方が都合がよいようで、いつもの営業スマイルでリラックスしていた。

「では、最高のアフタヌーンティーをご用意して、宇津井弁護士をお出迎えしましょう。また後程」

そう言って、奏と秘書の松尾は弁護士執務室を出ていった。
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