legal office(法律事務所)に恋の罠
「小池陽平くんを覚えていますか?」

山崎の言葉に、宇津井が顔をしかめる

「ああ、あの植物オタクか。大学院に残って研究してるはずだろ?」

「ええ、あなたが散々痛めつけた被害者の一人ですよ。そしてもう一人の被害者が、夢谷和奏。そして和奏に近づこうとした男性達だ」

山崎が開いたフォルダーには、アジア系の外国人男性がT大学の植物園の樹々を荒らす様子や、小池を囲んで脅す様子が映し出されていた。

その映像を見て体を震わせる和奏を、奏がそっと抱き寄せて支えた。

続いて、和奏に交際を申し込んだ男性が、同じような男達に取り囲まれ脅される様子が続いた。

「自分に関わる男性が、いつも同じような被害に合うことを気に病んだ和奏は、小池くんと別れてからは誰とも付き合わず、弁護者も女性に絞って対応することを余儀なくされた」

「それが俺になんの関係がある?俺がやらせてたっていうのか?自惚れも甚だしいな」

唇を噛んで俯く和奏を抱き締める奏は、ギッと宇津井を睨んだ。

「金持ちしか相手にしない女性弁護士さんが、どっかの誰かに恨みを買った、それだけじゃないの?」

「それがあんただろ」

それまで黙って聞いていた湊介が、声を荒らげて叫んだ。

「証拠はある。奏さんのお得意様にアジアの経済界の首領がいるんだ」

湊介が他のフォルダをクリックすると、これまで小池や男性達を襲っていた外国人メンバーが、あっさりと宇津井の指示で彼らを襲っていたことを白状する様子が映っていた。。

「裏の世界にも秩序がある。底辺で生きるものが従うべきカースト制度は、どこにでも存在するんだよ」

「・・・くっ!こんな外国人の戯れ言なんて証拠にはならない。お前らに脅迫されて言わされたんだろう」

宇津井はあくまでも認めようとしない。

「四年間のあなたの行動をまとめた興信所の資料がここにあります。あなたは、全てが自分の思う通りに運ぶことに満足して、まさか自分が追われているとは夢にも思ってもいなかったでしょうね」

山崎が不適に笑う。

「まさにそれが狙いだった。大事な姪を傷つけた罰だ。私達は、君を追い詰める機会を待っていたにすぎない。そして君は食いついた。一番敵にまわしてはいけない餌に・・・」

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