海賊船 ~天下は誰の手に~
武田軍 vs 上杉軍

「ようやくこの時が来ましたね。信玄。」

「そうだな、謙信。終わらせる前に少し話でもするか?」

「……それもまた一興。小舟を出します。あなた一人で来なさい。無論、手は出しません。しばし語り合いましょう。」

「わかった。」

「それが終わったら、あなたの首はいただきますからね。」

そう言って謙信は笑みを浮かべる。この男の笑みほど怖いものは無い。全てを見透かしてるようで、全てを見下しているような、そんな笑みだ。

「俺はまだこの首を手放す訳には行かない。お前の首は俺が貰う。小舟を出してくれ、幸村。」

「良いのですか、信玄様。上杉の言葉を信用しても。」

「ああ。あいつとは昔馴染みだからな。あいつの事は俺が1番知ってる。あいつはお前が思ってるような卑怯な真似はしない。」

「…………ならば、信用致しましょう。船を出します。」

「………ありがとな。」




「久しぶり……だな、謙信。お前とこうして二人っきりで話すのは。」

「そうですね……あなたが家を出た時から敵どうしでしたからね。あなたが国を持ったと聞いた時は驚きましたよ。信玄。」

「ははは、そうだろうな。あのころの俺ならこんなことはしないだろう。あのころの俺はだいぶ荒れていたからなぁ~w」

「そうですね。戦場で迷子になったと思ったら敵陣に突っ込んでいってるし、本船から消えたと思ったら小舟でどっかいってるし……あげればキリがないですよ。」

「はは、すまんな。あの頃は自分がいちばん強いと思い込んでいたからな。どうも自分勝手な行動をしてしまっていた。」

「確かに、あの頃のあなたは自由で、自分勝手で、でも、とても優しい人でしたね………覚えていますか?あなたと私、そして官兵衛の間に起きた出来事を………」

「………忘れられるわけない、というか忘れちゃいけないからな…。」

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