海賊船 ~天下は誰の手に~
「…………俺は…」

俺が暴れなくなってから2度目の春が来た。城にある桜を見ていた。そういえば半兵衛はこの花が好きだったな。そんなことをぼんやりと考えていた。

ぼーっとしていると考えてしまう。俺はこのままでいいのだろうか?このままずっと欲を抑えて生きていくのだろうか。

………そんなのは嫌だった。俺は俺の思うままに行きたい。たとえ敵を増やしても。もうこの城に帰って来れなくなったとしても。俺は俺の生き方をしたい。俺だけの生き様をみいだしたい。

そう、強く思った。

「俺は俺なりの生き方を見つけたかった。それだけだよ。たとえお前と敵になったとしてもな。」

「そういった強い意志だけは昔から変わりませんね。」


「……さて。何か言い残すことはありますか?信玄。私はもうそろそろあなたと戦をしたいです。」

「奇遇だな謙信。俺もそう思ってたところだ。お前こそ言い残すことはないのか?」

「……そうですね、あなたの首が私のもになったときに言いますよ。」

そう言った謙信はすでに刀を構えている。長い刀を鞘からとりだしその切っ先を俺に向ける。

そして俺もまた刀の切っ先を謙信に向ける。

「寂しいこと言うなぁ。まあ俺は死なねぇけどな。」


そして、俺と謙信は小舟の中で一言も喋ることなく戦い続けた。
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