うちの兄が不良すぎて困る。



日比谷さんもお兄ちゃんと同様に不良たちから相当名前は知られてるはずだけど、こうして制服を着ていると普通の人に見える。

それを証拠に、チラチラと振り返るのはすれ違う女子高生ばかり。どうやら日比谷さんの綺麗な顔を見とれてるようだった。



「……バイク通学じゃないんですね」


お兄ちゃんは気が向いた時にだけ学校に行くけど、その時には必ずバイクで登校してる。

まあ、すぐに早退したりして、まともに授業は受けてないけど。



「禁止されてるからね」

日比谷さんが柔らかい表情で言った。



こんなことを言ったら失礼かもしれないけど、ちゃんと規則を守っているなんてすごく意外だ。

不良なんて縛られれば縛られるほど、ルールを破りたくなる人たちばかりだと思ってたから。



「ん?なに?」


ちょっと拍子抜けしてしまって、つい日比谷さんの顔をよく見すぎてしまった。



「……す、すいません。なんか勝手に日比谷さんは怖い人だと思ってたので」

「朔也みたいに荒ぶってると思った?」

「はい。え、あ、すいません……」

「はは、謝ってばっかり」


日比谷さんは本当にいい顔で笑う。


思えばこんな風に男の人と並んで歩いたのは、お兄ちゃん以外で初めてかもしれない。


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