うちの兄が不良すぎて困る。
「お兄ちゃん、私、帰る」
「どうせお前暇なんだろ。たまには混ぜてやるよ」
「混ざりたくないよ!それに私、バイクなんて……」
お兄ちゃんのバイクは400cc。
大きいし、高さもあるし、なによりかなりのスピードが出ることはお兄ちゃんがいつも乗ってるから知っている。
「ゆっくり走ってやるから早く乗れ」
私は急かされるようにして、バイクの後ろに乗った。
シートには窪(くぼ)みがってお尻がしっかりと収まるようになっていた。もっと固くて痛いと思っていたけど、けっこう乗り心地がいい。
「掴まっとけよ」
「う、うん」
お兄ちゃんがバイクのスタンドを足で蹴ると、車体はうるさく発進した。
マフラーから排気ガス。お尻から伝わってくるエンジンの振動。
なにもかもが初めての体験で、私はぎゅっと強くお兄ちゃんの腰に手を回した。