うちの兄が不良すぎて困る。
最初はとても怖かったけど、目を瞑らずに外の景色を見ると、いつも通っているはずの道が全然違って見えた。
車道側からの並木道や、道路標識。
バイクが進むたびに風が身体をすり抜けていって、私まで一緒に走ってるみたい。
バイクは怖いもの。速いものって思ってたけど、うるさく感じていたエンジン音でさえ今は耳障りではない。
「大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
それに、お兄ちゃんとこうして同じ風を共有できてることが嬉しく感じていた。
暫くして着いたのは、ボーリング場だった。
前を走っていたお兄ちゃんの友達たちも、私のことを見守るように後ろから付いてきてくれていた日比谷さんも、ちゃんと交通ルールは守っていた。
暴走したり奇声を上げたり、周りに迷惑をかける人たちだと勝手に思い込んでいた自分が恥ずかしくなるくらい。
たしかに近寄りがたい人たちばかりだし、目付きもいいと言えないし、服装もだらしない。
でも、心が汚いわけじゃない。
だって、みんなが初めてバイクに乗った私のことを心配してくれた。
俺のバイクはこうなってるんだよ、ってみんなが教えてくれた。
不良イコール悪人だと思っていたけど、きっと違う。
だってこの人たちはお兄ちゃんの友達。
ここは、お兄ちゃんが大切にしている居場所なんだ。