うちの兄が不良すぎて困る。
ボーリング場のビルは三階建て。建物の一階はゲームセンターになっていて、不良たちのたまり場として有名な場所だった。
お兄ちゃんの友達たちは慣れたように遊びはじめて、私は壁に沿うように置かれていたベンチにちょこんと座った。
中は薄暗くて、とても怪しい雰囲気だったけど、不思議と怖さはなかった。
「はい、これ」
チカチカと光るゲーム機のネオンを見つめていると、日比谷さんが私の隣に腰を下ろした。
「飲んでいいよ」
そう言って渡してくれたのはペットボトルのジュース。
「え、あ、お金……」
「いいよ」
「すいません。ありがとうございます」
日比谷さんが買ってきてくれたジュースを飲むと、さっぱりとした柑橘類の香りが口いっぱいに広がって美味しかった。
「ちょっと疲れた?」
「いえ、大丈夫です」
お兄ちゃんは友達とお気に入りのゲームで遊んでいた。
……あんな風に笑ってるお兄ちゃんを見たのは久しぶりかもしれない。