うちの兄が不良すぎて困る。
この街でお兄ちゃんのことを知らない人はいない。
素行の悪い人でもそうじゃない人でもお兄ちゃんは有名で、特に不良たちからは一目も二目も置かれている存在。
名字のとおり不良たちの頭として鬼のように恐れられている。
「ま、まじで鬼頭先輩の妹さんです、よね?」
さっきまでの威勢はどこに行ってしまったのか。
明らかに年下である私に敬語を使いはじめて、姿勢も亀のように低い。
「……そうですけど」
私が口を濁すように答えると、不良たちは慌てたように道を開けた。
「鬼頭先輩の妹とは知らずに申し訳ありませんでした!コンビニに行くんですよね?どうぞ、どうぞ」
「なんなら俺たち荷物とか持ちますから!」
このパターンは今に始まったことじゃない。
私が鬼頭朔也の妹だと知ると、大抵の人たちがこうして態度を一変させる。それだけお兄ちゃんのことが怖いのだろう。
私は親切にしてくる不良たちから逃れるようにして、そそくさと買い物を済ませた。