うちの兄が不良すぎて困る。
不良なんて今どき流行らないし、モテるわけでもない。バイクを乗り回してパトカーと追いかけっこして、喧嘩を売られれば迷わずに買う。
そんなの、ちっともカッコいいことじゃない。
「お兄ちゃんが悪目立ちすると私まで巻き込まれる。恥ずかしいから本当にやめて……」
「あ?恥ずかしいってなんだよ」
ギロリとお兄ちゃんが高圧的な目をした。
切れ長で、ただでさえ目付き悪いと言われているだけあって、お兄ちゃんが睨むと迫力が違う。
でも、こんなのは全然怖くもなんともない。
大半の人が怯んでしまうことも、私はもっと手が付けられないお兄ちゃんを知ってるから。
「私、来年は受験生だし、鬼頭って名字は珍しいんだから私にまで……」
悪影響を及ばさないでほしい、と言いかけたところで、お兄ちゃんのスマホが鳴った。