レンダー・ユアセルフ
「……そんなに悲しまないで」
「アリアナ」
「どうしたらジョシュアの力になれる?今日国王様の前で言った言葉は、偽りなんかじゃないのよ」
瞠目し彼女の言動を見守るジョシュアの本音とは、一体何なのだろう。
何をすれば、彼女を求めてくれた彼に応えることができる?
「ジョシュアが哀しいと、私も哀しい」
言葉が紡ぎきられる前に衝撃が彼女を襲う。目の前にある温もりが、触れている体温が。他ならぬ青年へと成長したジョシュアのものなのだと実感させられる。
引き止めるように言葉をおとしたアリアナを振り返り、苦しげに端整な眉を寄せて彼女を掻き抱いたジョシュア。その姿は、一見昨晩王宮の前での抱擁と同じように見えるかもしれない──…が、その実あのときの彼とはまるで違うジョシュアがそこには居た。
あの夜アリアナに縋るように抱きしめた行動は、まるで母親を求める幼子のようで。
片や今の彼に関して言えば、その内に留める情熱が決壊したかのように彼女を求めていた。それがアリアナに伝わらない筈もない。貪欲に彼女自身を求める彼の胸奥は、燃え盛る恋情に支配されてしまっていたのだから。
「アリアナ」
酷く掠れた低音の言葉が、あの幼かった彼の成長を嫌でも再認識させてくる。耳朶に柔な唇を寄せて言葉を囁く彼の欲望に火が付いたかのようだった。