レンダー・ユアセルフ
「……私は。すでに純潔を失った身なの……」
「は、……」
「軽蔑されても仕方のないことだと思ってる。他の男に抱かれたのよ?何も、ジョシュアが無理をすることは無いわ」
自分だったら、長年想ってきた相手がもしも他の誰かと結ばれていたとしたら。その事実とは向き合いたいとも思わないし、むしろ気持ちが離れてしまっても仕方のないことだと彼女は考えている。
「きっと、神に赦されることも無いわ」
一体何故なのか──アリアナ自身、よく解らない。けれどあの男を、金髪碧眼の美丈夫を思い浮かべると。それだけで彼女の胸奥はざわめきに支配されてしまう。
だから逃げようとした。その理由から逃れるように考えすらも放棄したのは、眠る感情が目覚めることをアリアナ自身が恐れていたからに違いない。
「……だから貴方が私を嫌ったとしても、仕方のないことよ」
ジーファに対し常に否定的な態度や考えを持ち続けていた理由は、他でも無く一般的な考えに則りアリアナの決断を下してきたからに過ぎない。
同意も求めずに純潔を奪うような相手を赦して良いはずがない。そう強く思ってきたからこそ、あの日ジョシュアに求められた彼女はその手を取ってシャムスに渡った。
だけどあの選択は、もしかすると間違っていたのかもしれない。現にこうして向き合っているジョシュアを、この数日で何度傷付けてしまっただろう。