レンダー・ユアセルフ
気に障るどころの話ではない。きっと、ミーアの心に眠る傷を呼び起こしてしまった。
そう思わずには居られない。
「……母は、娘の私から見てもとても素敵な女性だったように思います」
静かに語り始めるミーア。その様子を、蜂蜜色の瞳を揺らして見つめ続けるアリアナ。
「私の誇りでした。幼い頃よりジョシュア様に懐いていただけて、母自身とても嬉しかったのだと思います」
予想が現実と合致していく。自分はなんて不躾な質問をしてしまったのだろうと、自らを呪う他なかった。
「だからこそ、母が亡くなったときのジョシュア様はお痛ましくて見るに堪えない状態でございました」
「……ミーア」
手を伸ばして良いものか、恐れ戸惑った。
ミーアとの溝を突き付けられたばかりなのだ。もし安直に触れたとして、更に嫌悪を抱かれることに恐怖していた。
「まだ幼かったわたくしを王宮に招き入れてくださったのもジョシュア様にございます。だからこそ、わたくしは生涯あの方にお仕えすると心に決めたのです」
しっかりと見据えられた双眸。それは揺れ戸惑う人間のものではなく、明らかに自らを律し凛とした者の面差しだった。