レンダー・ユアセルフ
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チューリア王宮にて一歩アリアナの所在究明に近付いたのと同刻のこと。
ある国との国境にて不穏な空気に身を置くジーファは、婚約者失踪の件に我関せずといった態度を貫き通しており、側近であるマルクですら不用意に言葉を向けることを躊躇う始末である。
武装して馬に跨るその身形はまるで戦地に赴く兵士のようだったが、その実彼は決して他国との戦争を引き起こそうというわけではない。
しかしながら『対話』という名目のもと集った者とは思えぬほど、両国の人間が装う姿は非平和的と言う他なかった。
通常こういった場所に向かわせる人間は従者であるのが常套だが、両国王子当人が赴いていることから異例な事態であることは容易に判断できる。
そういった理由から両国王子のみが武装という形で集う。これは事前に送受していた書面で予め決めていた事項でもあった。
「ユースヒトリ国第一王子ジーファ。この名のもとに、シャムスへの友好条約締結を申し入れたく存ずる」
声高らかに宣言された科白が拓けた場所──もとは森林が茂っていたのだが──に木霊する。
最悪の事態を想定していたシャムス側の王子、ジョシュアは。顔を合わせたのも束の間、鼓膜を揺らした相手の予想外の言葉に瞠目を隠せずに居た。