レンダー・ユアセルフ
/青年たちよ、与えよ
ジーファからの手紙を受け取ったジョシュアは、その晩アリアナの部屋を訪れていた。
窓を開けて雲から抜けては消えてゆく月を見上げていた彼女は、前触れ無く響いたノックの音を背に振り向いて扉を見つめる。
そして「どうぞ」と淀みの無い、凜とした声音で返答を紡いだ。
「こんな夜更けにいきなりごめん」
申し訳なさそうに眉尻を下げ、中へ歩を進ませては丁寧な動作で扉を閉めたジョシュア。
それを見て訪問者が彼であることを知ったアリアナは、僅かに瞠目する。
最後にこの部屋を訪れたのは――そう、アリアナとの同衾を望み、実力行使さながら行為を進めようとしたあの夜である。
二人の間に決定的な軋轢を生じさせてしまったあの日を境に、ジョシュアは後悔に苛まれ以前のように彼女へ接することが出来なくなっていた。
「ううん、気にしないで。……久しぶりね、ジョシュア」
――こうして二人で話すのは。言外に、そんな科白を感じ取るジョシュア。
微笑を口許に湛えた彼女を前に思わず曖昧な笑みを浮かべてしまう。
間違いを犯してしまったのは紛うことなく自分自身であると、彼は痛いほど実感していた。
だからこそアリアナの何気ない一言にも敏感になってしまう。まるで彼女がジョシュアのことを責めているかの様に――そんな事はないと、解っている筈なのに。