レンダー・ユアセルフ
……ジョシュアは思う。こんなにも真摯に向き合われたら、此方とて誠意をもって対応せざるを得ないだろうに。
まさかとは思うが。これが、ジーファの狙いだったのか?――もし仮にそうだとすれば、完膚無きまでに打ちのめされた気分だった。
「アリアナ」
暫く沈黙を守っていたジョシュアが小さく彼女の名を呼ぶ。
尚も零れんばかりに大きな眸を見開いて手紙へと視線を落としていた彼女。
ジョシュアに話し掛けられた事に数秒遅れて気が付くと、震える手もそのままに立ち尽くしていた彼を蜂蜜色の輝く瞳で見上げた。
「……もう、いいよ」
泣き出しそうな顔を必死に取り繕って、懸命に笑んだ彼は色素の薄い茶色の眸を細めそう言った。
その痛ましい仕草がアリアナの涙腺を緩めていく。
「僕から君を、解放してあげる」
まるで最初から自分の我が儘であったかのように。シャムスに渡ったのは少なからずアリアナ自身の決意によるものだったにも関わらず、最後の優しさを振り絞ったジョシュアは穏やかに笑んで言葉を紡いでいく。