レンダー・ユアセルフ
今でも直ぐに思い起こすことの出来る金髪。真っ直ぐにアリアナを見詰めていたサファイアの瞳を持つ彼は、今頃どんな思いで居るのだろう。
不器用な感情表現。アリアナを手に入れたいが為に吐いてしまった自らの嘘に、こんな形で酬いようとするなんて。
一緒に居たあの僅かな月日の中でも、怒ったり、哀しんだり、沸き上がる様々な感情の処理に追われていたことを思い出す。
あんなにも感情の起伏に富んだのは、後にも先にもジーファに対してだけだったであろう。
「自分勝手なことは百も承知なのだけれど……ミーア、本当にごめんなさい」
シャムスに渡った時点でジョシュアと共に生きると決めた筈だった。
しかしながらあの、ジーファとの決別の決定打となった嘘が。
――純潔を奪ったというあの嘘の真相を、アリアナ自身が知ってしまった今となっては。
本当の気持ちに対して、もう何も見て見ぬ振りをする必要がなくなったのだ。
「……このままジョシュアと一緒に居れば、今度は私が"嘘"で接してしまうことになる」
アリアナの長い睫毛が伏せられていく様を、ミーアは唯々静かに見詰めていた。