レンダー・ユアセルフ



「私はジョシュアを幸せにできない。それは、心の内では他の男性《ひと》を想っているから」



一度、自らを落ち着けるかの如く深呼吸するように深く息を吐き出した彼女。

そして後続された言葉を耳にしたミーアは、驚きに目を瞠《みは》る事になる。







「でもミーア、…貴女は違うはずよ」







女中服を身に纏った彼女がハッ、と息を呑む。

誰にも打ち明けた事など無かった筈だ。にも関わらず、どうして眼前に佇む未亡人が知っているのか――瞳を泳がせて逡巡すれど、明確な答えが脳裏に浮上する訳でもなく。




それもその筈。アリアナは人伝《ひとづて》に聞いたのではなく、自らの経験に基づいた直感でミーアの気持ちを察していたのだから。



「貴女のジョシュアを見つめる眼差しは…他の誰よりも愛情に満ちているわ」



胸に手を当ててアリアナが言葉を紡ぐ。大事に、ゆっくりと。ミーアには其の気持ちを今後もずっと、大切にして欲しいという想いを込めながら。








「ジョシュアは今は気付いていないかもしれない。でもいずれ、貴女の存在の大きさを意識する日がやって来ると思う」


< 132 / 162 >

この作品をシェア

pagetop