レンダー・ユアセルフ
「その通り!さすが私の可愛い妹だわ」
腰に手を当てふんぞり返る姉を何とも言い難い面持ちで見遣るアリアナ。
「なぜそのような危ない真似を…!まわりは皆反対なさった筈です!」
「あら。お父様なんて一番乗り気だったわよ?」
「!?そんな、まさか…」
驚愕である。あの優しさに満ちた父王が自らの娘をこのような危険な目に遭わせるなど、有り得ない――そう信じて止まなかったのに。
まさか自分がシャムスに渡ってしまった所為でチューリアは大混乱に陥り、父も正気を保てなくなっているのではないか。そんな不安が彼女の胸中を覆っていく。
しかしながら、事実はアリアナの予想とは少し違う形で収束へと向かっているらしい。
「シャムスに顔が割れていないのは家族の中じゃ、私だけだったのよ」
「、だからと言って…」
「わかってちょうだい、アリアナ。家族みんな貴女のことが心配で仕方なかったのよ」
姉の口から聞かされたのは思いも寄らない現状だった。
アリアナが失踪した情報は、チューリア城に留め市井の皆には知らされていない為然程混乱には陥っていないという事。
そして、ユースヒトリから恒久的な友好条約の申し入れが有ったという事。
「じゃあジーファと私は、まだ婚約したままなの?」
「ええ。ジーファ様からこちらの好きなようにして良いと文が届いたけれど…私達もアリアナの本心がわからない以上返事のしようがなかったから」