レンダー・ユアセルフ
「っ、ご、ごめんなさい!大丈夫!?」
急に角を曲がったアリアナと額をぶつけてしまったと思しき青年……と呼ぶにはまだ早いかしら?と彼女が思うほど背丈の低い男子が、射殺さんばかりの眼光でアリアナを睨み据えていた。
男子は目に見えて痛がってはいないにしろ、その額はぷっくりと赤く腫れあがってしまっている。
おろおろと取り乱す彼女は、碧眼の彼がくすりと笑んだことにも気付かずにいた。
「痛すぎて声も出せないくらいなのかしら…、私ったらとんだ石頭なのね。わざとじゃないの。本当にごめんなさい」
常に王女然としている他の王族女性とは異なり、清々しいほど勢いよく頭を下げたアリアナ。
ときにそれは汚点といわれることになるが、当のアリアナはいくら諭されようとも聞く耳を持たなかった。
悪いときにはちゃんと謝る。当たり前のことだ。それを隠そうとする小汚い大人になるくらいならば笑われたほうがましだと、そう思っていた。