レンダー・ユアセルフ



「…貴女のそういうところが、」


震えた声で吐き出される。



「始めは憎くてたまらなかった。殿下がどんどん夢中になっているのが分かって、そのうちユースヒトリは崩壊すると思った。侯爵よりも俺ははるかにアンタを恨んでた」


だんだんと口調が崩れていく。丁寧さは失われ、代わりに彼の本心が言葉に表れているような気がした。







「…だけど」


カシャン、と。ただひたすらにアリアナの喉元を狙っていた剣先が、生気を失ったかのように青年の手に持つ鞘へと戻っていく。





「アンタがいなくなった後の殿下は…見るに堪えない姿なんだ。悲しみに暮れていて、戦場では感情のないロボットのようにすら思えてしまった」




思わぬ展開に、ただ真っすぐにその様子を見守るアリアナ。同時に、ジーファに対する心配な気持ちがふつふつと込み上げてくる。











「無礼は承知だ。頼む…これからは殿下の傍にいてほしい」




俺のことは好きに処分して良いから、と。

まだまだ青年になったばかりであろう、幼さの残る顔立ちで土下座し歎願するマルク将軍。


< 150 / 162 >

この作品をシェア

pagetop