レンダー・ユアセルフ
きらきらと光りに煌めく金髪に、爽やかな碧眼。
チューリアの市井で出逢った彼とは違い、一国の王子たらしめる豪奢な身なりで姿を現した彼。
対するアリアナは、未亡人として振舞っていたシャムスを発ったままの姿だ。
まるで対照的な恰好の二人は、ゆっくりと歩を進めやがて向かい合うと。
「浮気旅行はどうだったかな?お転婆な我がフィアンセ」
「……痛い所を突いてくるわね」
「いつもの仕返しだよ。気に入ってくれた?」
「どうかしら」
言葉とは裏腹に、くすくすと笑みをこぼす彼らの距離は今にもキスしそうなほどだ。
「僕になにか言うことは?」
「しょうがないから傍に居てあげる」
「まったく、素直じゃないなぁ」
「あら。最初に悪手を使ったのは貴方なんだから、シャムスの件は謝らないわよ?」
「いいよ。これでフェアだ」
吸い込まれるようにジーファの唇がアリアナのそれへと向かっていく。
そんな彼らを見守るのはマルクと、ジーファの乗ってきた馬車の荷台から姿を現したリリアのみ。
壮大な王国内の路地裏の行き止まり。
やっと気持ちが通じ合った二人を祝福するかのように、快晴の中で白鳥たちが飛んでいく。
―END―