レンダー・ユアセルフ

/その後の彼らは





ユースヒトリ国、後宮にて――


ジーファと正式に婚姻関係を結んだアリアナだったが、だからと言って彼女のお転婆ぶりが解消されるなどとは夢にも思うまい。





「マルク!マルクいないの!?」





ドタドタと音を立てて走り回るアリアナ。廊下を猛スピードで駆けてゆく彼女は、曲がり角からようやく姿を見せた将軍を目にするなり瞳を輝かせる。







対するマルク将軍はというと、すでに日常になりつつあるこの光景に対しげんなりとした面持ちを隠そうともしていなかった。



「……なんでしょう、王女殿下」

「ああ良かった!マルク、今日のジーファの予定は?」



颯爽と彼に駆け寄ったアリアナは、声を潜めて耳打ちする。
その台詞を聞いた瞬間、「げっ」とでも言いそうなほどに顔を顰めた青年はと言うと。






「アンタ、また城下に行こうとしてるんじゃ…」

「しっ!失礼ね、"市井調査"よっ」





そんなことを言いつつも、言葉尻に音符でも付きそうなほど気持ちが弾んでいるアリアナである。


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