レンダー・ユアセルフ




「残念ながら今日は陛下も休養日。抜け出したら絶対見つかると思うけど」



もはや彼女に対しては敬語が崩れ切ってしまっているマルク。彼女の雰囲気がそうさせるのか、彼女自身も敬語は要らないとは言っているものの自分でも解らない。






「えー…」




見る目明らかに肩を落としたアリアナ。仮にも夫であるジーファが休みだというのに、こんなにも落ち込む新婚の妻が世の中に居るだろうか。




と、そのとき。


「俺が、なんだって?」


ブリザードのごとく極寒の表情を浮かべながら、背後に佇むのは勿論――


「ジッ、ジーファ!!」


顔を青くして叫ぶアリアナ。さながら天敵に見つかった野生動物のようである。






傍に控えるマルクにとっても楽観視できる状況ではない。仮にも主人の情報をリークしていたのだ、相応の処罰を下されても不思議ではない。

内心冷や汗だらだらで自らの主君の前に傅《かしず》くと、「申し訳ございません!」と潔く頭を下げた。





そうなると慌て出すのがアリアナである。


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