レンダー・ユアセルフ
「ちっ、違うのジーファ!マルクは私が巻き込んだだけで何も悪くないの!」
「ほう?お聞かせ願おうか」
白けた視線で仁王立ちするジーファは、自分を蚊帳の外に二人が話していることが気に食わなかったのが正直なところだったが――勝手に弁解するならば聞いておいてやろう、という心境である。
「ど、どうしても城下町に遊びに行きたくって…!」
嗚呼、やっぱり。彼女の台詞を聞いてニヤリと口角を上げたジーファを見て、驚くアリアナとマルク。
自分が惹かれた王女は、母国にいた頃と何一つとして変わっていない。それが嬉しくなってしまったのだ。
「いいぞ」
「「え」」
即答された台詞にひどく間抜けな反応を返す二人。彼の返答に今にも喜び踊り出しそうなアリアナだったのだけれど、
「俺も一緒に行く」
「えー!?そんなの、全然お忍びじゃないじゃないっ!」
まさかの展開に非難轟々《ひなんごうごう》である。
チューリアのときのように、王女とは知らせずこっそりと市井を徘徊するのは無理そうだ――がっくりと項垂れる彼女を、ジーファは満足気に破顔し見つめていた。
どうしてもお転婆を成し遂げたい王女と、彼女をいじめて恍惚とした笑みを浮かべる王子の話である。
【終】