レンダー・ユアセルフ
「──なッ…!」
「見てわかるだろう?彼女も反省している。いい加減許してみてはどうだ?それに、駆けてくる彼女に気が付かなかった我々も悪い」
囁かれた言葉に驚く男子に首を傾げたアリアナであったが、その後すぐに耳朶を擽った金髪を持つ青年の言葉にひどく胸を打たれる。
明らかに周りを見ず疾走していた自分のせいだというのに──…アリアナは思う。しかも、今の彼女は侍女服を身に纏う明らかな使用人姿だった。
しかもそれだけに終わらず、青年に諭された背丈の低い男子からも思い掛けない言葉をかけられることになるとは──。
「すみません!こちらこそ睨むなどと無礼をはたらいて…、どうぞ、お許しください」
「え、え!?そんな…。私が悪いに決まっていますのに」
彼女自身も無意識の内の行動だったのだが、金髪碧眼の青年に対してはくだけた口調で語りかけたのに反し、こちらの男子には丁寧さを壊さずそう口にしていた。
それは彼、ジーファの纏う雰囲気が特別にそうさせていたのか否か──互いに頭を下げ合う両者を含みのある瞳で見つめる王子だけが、その答えを知っていたのかもしれない。
こぼれおちてしまいそうなほど大きな瞳を揺らすアリアナを前に、人知れずジーファの心はかちりと一つの決意をしていたのだった。