レンダー・ユアセルフ

Shall we dance?







───実はこれが初めての邂逅《かいこう》では無かったのだ。







「お初にお目に掛かります。ユースヒトリ国第一王子、ジーファにございます。麗しき姫君、どうぞ以後お見知りおきを」

「こちらこそ…、お噂はかねがね。こうして御挨拶申し上げること、まるで夢のようにございますわ。わたくしはチューリア国第二王女、アリアナと申します」





しかしたとえそうだとしても、彼女の口はおべっかを並べ立ててやまないのだ。



幼いころから執拗に受けてきた「教育」というものが、人前を意識させ思ってもいないことばかりを音にさせる。

ゆっくりと腰をおとしては一際豪奢なドレスの裾を指先で持ち上げて。


日頃は左手の薬指に通していた祖母の形見を右手の薬指に移動させて。

意地悪くも目の前の青年の炯眼《けいがん》は、出逢ってほどなく舐めるようにその指輪の存在を捉えていた。




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