レンダー・ユアセルフ
たどたどしい口調で侍女が事の顛末を語り終えた後のこと。
アリアナの姉──リリア第一王女は政務に励む両親のもとを訪れていた。
妹と4つ歳の離れた彼女は、すでに他国の王の妻となっていた。故に母国を訪れることも久しく、仲の良い妹との再会に心を躍らせていたのだ。
しかしながら、そんな彼女を待ち受けていたのはまさかの事態であった。アリアナが行方知れずになっているなど、想像も付かなかったのだから。
「お父様、お母様。……アリアナのことでお話がございます」
笑みの一つも浮かべずに淡々と語る娘の姿に、これは只事ではないと息をのむ両親。
つい先ほど舞い込んできた、末の娘への縁談話。それを逸早く伝えるべく駆け出したリリアの姿は在れど、肝心のアリアナの姿がどこにも見当たらない。
「妹が、アリアナが。……行方知れずでございます」
「なんと!それは誠か、リリア!?」
「ええ。どうやら気心の知れた侍女に身代わりをさせていたようです。本日の正午には、すでに城をくだっていたと」
「……、なんてことだ…」
激しく瞠目した父王は、続けられるリリアの言葉に動揺を隠せない。
それは彼の隣で沈黙を貫く王妃にも同じことが言えた。更に言えば、彼女は夫よりも自責の念に駆られていたため容易には声を出せなかったのだ。