レンダー・ユアセルフ





──この男と出逢ったのは昨日の昼のこと。そして思い掛けず再会したのが、ちょうど日が暮れ宵にのまれた頃だった。





そして、今はすでに朝陽がカーテンの隙間から漏れている。

自分は今どういう状況なのか。軟禁されていることに違いは無いにしろ、王宮の様子を全く知り得ないことは彼女の心に焦りや不安を増殖させていく。




拘束されてから何度も問いかけた。けれど、青年が彼女に答えをくれることは無かった。

なにが『片情張り』なのだろう。この男は、父親になにを言い、なにを求めようとしているのか…。

ぎりっと奥歯を噛み締める。そして深く思案した。もしも目の前のこの男が、本当にユースヒトリ国の王子なのだとしたら、なにを要求すれば一番利となるだろう?






──そしてふと彼女の脳裏を掠めた一筋の思考を皮切りに、それ以外の思いがすべて吹き飛んだ。








「(まさか…、いやでも、不可能じゃない)」








それは恐ろしい推察だった。仮にそれが正解なのだとすれば、彼女の母国であるチューリア国の存亡にも関わってしまうほど。









「きみは僕の予想を裏切る王女だったよ。もちろん、いい意味でね」









哄笑を形どってそう口にしたジーファを見つめるアリアナの瞳は、鋭利な刃物を彷彿とさせるほど厳しいものだった。



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