レンダー・ユアセルフ

/王子の策略






彼女がジーファに問い詰めていたあの瞬間より、さらに数時間後。

眠ることの許されなかった城。チューリア国内最大規模を誇るそれの一室では、今も尚継続して大臣たちの過激な議論が交わされていた。






「アリアナ王女の救助を最優先すべきだ!」

「しかし他国に傅《かしず》くのか!?」

「ユースヒトリといえば名の知れた軍国…もしも要求に応えなければ、どんな仕打ちを受けることになるか…」

「だからと言って王女を人身御供さながら差し出すと申すか!」







会議は何時間も続いていた。部屋の末端同士をむすぶ長い机。その最たる位置にある椅子に腰掛けているのはアリアナの父、チューリア国王その人であった。

事の発端は数時間前のあの瞬間。家族三人で深刻な顔を合わせつつアリアナの安否を心配していたとき。そのさなかに戸の向こうから声を掛けた、臣下のひとりによる重大な報告だった。







『先ほど文書が届けられたのですが、その内容が──』

『よい。申せ』

『っ、は!…アリアナ第二王女を、ユースヒトリ国第一王子の妻にとの要求にございます。…さらに王女の身柄はすでに拘束していると』







もし応えなければ、彼女の失踪事件を世間に公表する。文書にはそう続けられていた。

だからこそ会議は長時間にわたるものとなっていた。このような脅しをかけるような国に渡して彼女は無事でいられるのか。父の心配は娘を思ってのことだった。



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