レンダー・ユアセルフ






「チューリア国王様、どうかご無礼をお許しください」

「……貴方は……」

「ええ、御存知なくとも無理はありません。私はあまり公の場におりませんでしたから」







アリアナの父の前まで辿り着いた青年は、文句のつけようもないほどに整った顔立ちをしていた。その相好を崩し、優雅な動作で国王に向け敬意のこもった一礼をする。







「このたびは私の臣下がたいへんな無礼を働き、誠に心苦しく思っております。…つきましては直接お詫びにと参上した次第です」







その言葉を受けて、この一室に集うほど見識の肥えた大臣たち、そして言うまでもなく当の国王は「まさか」という所感を抱く。

──そして不運なことに、その予感が的中してしまうとは。







「私はユースヒトリ国第一王子、名をジーファと申します。どうかこのたびの事の顛末を説明させてくださいませんか」

「!?」








当の王子がこの場を訪れるなど、誰もが思っていなかったに違いない。

だからこそ父王をはじめ立ち上がりかけていた大臣たち、そして動揺を極め入室するに至った数人の近衛兵たちを含め全ての人間が息をのみ大きく瞠目した。

そのことに気付いているのか否か、さっそく自己紹介を済ませたジーファはアリアナには見せないような穏やかな表情で『好青年』を演じ、再度一礼するなり滔々と語りだす。




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