レンダー・ユアセルフ






「かねてより私はアリアナ王女に心を奪われておりました。それを偶然知ってしまった軍を統べる側近の一人が、信じられないことに彼女の身を捕えてしまい…。まさかこのような事態に陥っていようとは。加えて私の臣下が脅すような真似をしてしまい、申し訳ございません」







深々と頭を下げるジーファ王子の姿を、この場に居る全ての人間が信じられない思いで見つめていた。




低頭し含みのある笑みをおとした当のジーファの表情は、まさに「してやったり」とでも言いたげなものだったのだが、それを目にした者は誰一人として存在しない。

更に言えば立て板に水と言い放った先の台詞は、殆どが真実とは異なる内容である。




彼女の身を拘束したのは言わずもがなジーファ本人であり、かの文書を作成したのも何を隠そうこの青年王子なのだ。

彼にしてみればこの行動すら計画の一端であり、こうして身を振れば自らの印象がぐんと好意的なものに変化することも承知の上だった。




アリアナに対する情熱的な告白の真意についてのみは、彼自身の胸奥に問わなければ明らかにならないことである。









「……こうした行為をするに至った愚かな家臣に関しましては、私が責任をもって厳正なる処罰をいたします。王女の母国を脅すなどという行為は、憤然たる思いを極めるものですので」






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