レンダー・ユアセルフ
こんなことを口にしつつも、本当に軍のトップを処刑するわけではない。
それに該当する家臣はアリアナと出逢った際に隣に居た背の低い男である。あれはジーファの最も信頼する臣下なのだから、そうみすみす切り捨てるわけにはいかないのだ。
それにここまで言っておけば、誰も王子が処刑せず許すなどと腑抜けたことは思うまい。
たとえ彼の前職への嫌疑は募ったとしても、彼自身には登用されて間もないのだと言わせておけば万事解決である。
「私が思いを募らせるばかりに、王女を危険な目に遭わせてしまい申し訳ありません。アリアナ様は私が責任をもってお返しいたします」
こうして、国王をはじめ皆がジーファの演技に騙されてしまったのである。
更に彼はこの場で「私自身、直接は王女にお会いしておりません」と自らの潔白を強める発言をした。
だからこそ、冒頭でわざとらしく「初対面」を強調したのである。そうしておけば誰からも怪しまれることはない。…そう、アリアナを除いたすべての人間からは。
こうしてジーファの脳内にて築き上げられた物語は、他でもない彼自身の手によって現実へと姿を変えていった。