レンダー・ユアセルフ
「美丈夫と評判のジーファ様にお逢いして、もう居ても立っても居られないのね!?」
…と、淡い期待を抱く行為そのものが馬鹿馬鹿しく思えてしまうほど、大口を開けて豪快に笑った姉リリア。
それだけに留まるならばまだ救われるにしろ、そのままの相好でバシン!とアリアナの背中を叩いてくるのだから堪らない。
恨めしいと言わんばかりの眸でじろりとリリアを睨み上げる。
「あら嫌だ。そんなに恐い顔をしなくても、お父様に言えばすぐにでも嫁がせてくださるんじゃないかしら?」
「……どうして私がそのようなことを、」
「あまりムスッとしないで、アリアナ。そうして恥ずかしさを誤魔化そうとしたって、この私には丸分りなのよ!」
その後いくらアリアナが否定しようとも、陶然たる表情でジーファの美貌について語り出す彼女を止めることは叶わなくて。
そんなにお気に召したならば、リリアが結婚すれば良かったのに──既婚である姉に向けそんな所感すら抱いてしまったアリアナだったが、その瞬間胸を刺した違和感に僅かながらに瞠目する。
得々と未だに語り続ける姉の姿を見据えながら、少しずつ自身を蝕み始めたその感触に、嫌な予感を拭えずに居たのだった。