レンダー・ユアセルフ
片やユースヒトリ国第一王子であるジーファのいでたちも洗練されたものだ。
その端整な容姿をてらうことなく、慎ましげに押し上げる純白の装束はまるで彼だけのために作られたもののように見受けられる。
実際尽きることのない財を有する王族なのだから、事実に相違無いだろう。
ステップをきざみながら広場中の人間すべての視線を独占してゆく彼らは、自分たちの立場や地位、外見すらも客観的に理解するところだ。
周りの人間がうっとりと溜め息をこぼす。
いつもならば余すところなく感じることのできる注目の波でさえ、眼前で優美に微笑む紳士のおかげで今日はさざ波程度に捉えられた。
──…そう、この「腹黒紳士」のおかげで。
他の人間に向ける注意が削がれてしまうほど警戒せざるを得ないのだから。
天使のような笑みで周囲を魅了していたアリアナの目付きが一変する。
刹那的に鋭い、険呑たる雰囲気に包まれた彼女の変化をジーファは至極愉しげに見守っていた。