レンダー・ユアセルフ





おもむろにベッドから腰を上げたアリアナは大きく波打つカーテンへと歩み寄る。




そして──シャッ。勢いよく横に引けば、まるで庶民には馴染みのない大仰なサイズを誇る窓枠から外の景色が視界を刺した。

更に強くなる欲求。城下で暮らす『普通』への憧れ。




もしも自分が侍女の一人だったなら、あんな男と出逢うことも強引に結婚させられることもなかった──そんな思いに駆られても、幼い頃より王族たる自覚を説き伏せられてきた彼女は自身の義務についてもよく理解していた。

やはり家族を危険に晒すことは避けたい。でも、どうしてもこのまま腹を括ることができない。






瞑目しどろどろに搗ち合う葛藤を経て彼女が導きだした答え。それは、




「──…ごめんなさい」





これで、最後にするから。








クローゼットの中から比較的地味な洋服を選んで袖を通したアリアナは、大きく視界を占める窓を施錠し外の世界へと飛び出した。



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