レンダー・ユアセルフ
/運命の再会
──アリアナには、隣国に一人の幼馴染と呼べる少年が存在した。
それは彼女の幼少期にまで遡る。公務で隣国──シャムスを訪れていたアリアナの両親に連れられたアリアナは、彼らが仕事をしている間預けられた女中のもと、一人の少年と出逢ったのだ。
『はじめまして。わたしは、アリアナと言います』
花開くような笑顔で挨拶を口にした彼女を、くっきりとした顔立ちの少年は一瞥しただけで何の反応も返さなかった。
そのことで泣き出しそうになる彼女。慌ててアリアナをあやす女中を前に、幼くも嫉妬心を芽生えさせたらしい少年は女中を奪うようにしてアリアナを睨め付ける。
その様子を見て、幼心に彼女は覚る。
──この子は、きっと、この女性の子どもに違いない。…そもそも、その考え自体が事実との履違えであるとも知らずに。
それからの彼女は慎重になった。
元来少し大人びた考えのできるアリアナだったので、一度少年の態度を目の当たりにしてしまえばそれを教訓とし行動を改めることなど造作ないことで。
公務で訪れていたこの国とアリアナの父が統べるチューリアの力関係はほぼ同等。
そのため彼女の思うように、少年がかの女中の実の子どもだとしたら。本来、気を遣うべき立場は少年自身に他ならなかったのである。
しかしながら、アリアナは居丈高に振る舞うことを知らない。その為さも当たり前のごとく彼女は少年を窺うように接することができた。