レンダー・ユアセルフ
『アリアナ。次はいつ来れる?』
結果として、短い時間で彼らはすっかり互いに気を許す仲となっていた。
国王の遣いが彼女を迎えに来たときには、少年は大きな瞳に涙を溜め引き止めたいと言わんばかりの表情でアリアナに問うた。
そんな男の子と向き合う幼き日の彼女は、初めて顔を合わせた瞬間と同様、花開くような笑みで整った顔立ちを彩ると。
『わからないけど、絶対にまた会いにくるよ』
もしこの先も両国の関係が良好に進むならば、きっとまた逢える日がくる。
そんな彼女の願いが叶うように国同士の関係は比較的穏やかであったが、両親が公務でチューリアを離れる際、アリアナを連れて行ってくれたのはこの時限りであった。
理由は、王女たるアリアナをそう易々と人の目に触れさせないため。
城下に住まう人々が「アリー」と名乗る彼女を前に疑問を感じなかった所以は、アリアナの容姿を詳しく知る人物が王宮内に限られているからであった。
何年もの月日が流れても、彼女があの日の少年を憶えていられたのには理由がある。
彼らは今でも、文通という手段で連絡を取り合っていたからだ。アリアナが手紙を出すとなれば、必然的に相手の素性は調べられていたに違いない。
しかしながら彼女が、あの日の少年と文通するにあたり両親から咎められたことは一度もなかった。それを不思議には思うものの、詳らかに問い質すこともしなかった。
ただ単に「両親の優しさ」だと捉え、疑うこともしなかった。
──もしも本当に他国の女中の子どもであったなら、きっと父王は手紙を送ることを許してはくれなかっただろう。
目まぐるしく脳裏を駆け巡る幼馴染と呼ぶべき相手との出逢いが、無意識の内にアリアナの思考を占拠した。
あの男の子の名前。……それは、