レンダー・ユアセルフ






「──…、ジョシュア?」






幼き日より『文』を通じて言葉を交わしてきた相手。あの日の面影を少しばかり残しつつも、すっかりと青年に成長した幼馴染を前に声帯が震える。

大きく瞠目し見据えてくるアリアナを尚も笑みの滲ませた表情で捉えた、あの日の少年──ジョシュアは、「そうだよ」と穏やかな口調で応えた。




手紙の中で、稀に写真を送り合っていたから容姿を見て驚いたのだ。

間違いなく幼馴染のジョシュアだと。他国の女中を母親に持つ彼がこの国にいることが不思議でたまらないアリアナは、「どうしてここに…」尚も呆然とした様相で音をこぼす。







──旅行?でも、それならあの優しい女中はどこ?








もしかすると近くに居るのかもしれない。そう思った彼女は忙しなくあたりを見渡すものの、穏やかに笑む女中と似た女性はおろか、この場所には城下で飲み明かす男たちしか居なかった。



明らかに平素とは異なるアリアナの様子に、久し振りに会えたことも吹き飛び店主は「アリーちゃん、どうした?」と心配の声を掛けてくる。

店主が「アリー」と口にしたときに、面白げに瞳を細め「ふぅん」と洩らすジョシュア。





それはまるで、恰好の獲物を見付けた獰猛獣のようであった。

予想外なジョシュアの反応に背筋をぞくりと震わせるアリアナ。久方ぶりに直接見る彼は、大人になりすぎて何だか遠い存在に思えてしまう彼女である。




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