レンダー・ユアセルフ
「…もういいでしょ、ジョシュア。私のことをこれ以上聞いたって得すること、何もないじゃない」
「まあ、幼馴染だしね」
「ねえ。どうして此処にいるの?チューリアに来るなんて、この間の手紙に少しも書かれていなかったのに」
予想外の人物が現れたとはいえ、店主に「久し振り」の理由を聞かれずに済んだことは正直有難かった。
そのため、空いていたジョシュアの隣へゆるやかに腰を下ろす。
「……本当は、『僕は』来るつもりなかったんだけど」
強調させて自分のことを口にした彼に疑問が募る。そしてそれを言う横顔が、今まで見たこともないような「無」の表情に見えて背筋が戦慄しそうになる。
先を促すようにその横顔を見据えていれば、彼女の視線を受けてようやく持ち前の穏やかな微笑を湛えたジョシュアはと言うと。
「それよりアリー。僕に何か、言うことは?」
「……言うこと?」
「そう。おかしいと思わない?いきなり君との文通が遮断されてしまうなんて」
彼の言葉の意味がわからず、思わず首を傾げてしまうアリアナ。
──文通が遮断?そんなはずないわ、つい先月返事を送ったばかりだというのに…。
怪訝さを剥き出しにして先の台詞の真意を咀嚼するアリアナを真隣の席で、観察するように見つめていたジョシュアは。彼女が心から疑問に思い言葉をおとしたことを悟り、無意識の内に深い溜め息を吐き出していた。