レンダー・ユアセルフ




素朴ながらも豪奢な身形へと着飾ったアリアナは、合流したジョシュアと共に奥まった一室を目指し歩を進めていた。





「でも、本当に良いのかしら」






小さな声で呟きを口にした彼女を見下ろす、穏やかな茶色の双眸。その視線が先を促しているように思えて、一度目を伏せたアリアナは続きを音にする。






「国王様と王妃様にお会いするのに、顔を隠したままだなんて…」

「いいんだよ。さすがに他の人なら話は別だけど、きみは僕の特別なんだから」

「……、でも」

「それに、顔を見られたらまずいことは解ってるでしょ?両親はきみのことをよく知っているんだ…一方的に、だけれどね」

「どういうこと?」






眉根を寄せて呟かれたアリアナの一言にジョシュアが答えることは無かった。ちょうど眼前に現れた大仰たる扉が、その言葉を奪ってしまったに違いない。

ただ単にタイミングが悪かっただけなのだと、彼女は己に言い聞かせる。

見上げた先に映るジョシュアの『無』表情に胸騒ぎを覚えたが、彼は然も造作ない動作で優雅に扉をノックした。





───ギィ、



刹那、独特の音韻を漂わせ大きな扉が開けられていく。

臆する様子も見せずに室内へと足を踏み入れたジョシュアに倣いその背を追うアリアナは、内側にて扉を開けた使用人が二人居ることを目線で捉えた。



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