レンダー・ユアセルフ
そして最奥、大きな玉座に鎮座する人物──老獪な顔付きでこちらを見据えてくる白髪混じりの男性。
彼がこの国の王に違いないことは、雰囲気は勿論のこと、その頭上で存在を主張する王冠が明らかに証明していた。
「父上。お時間を割いてくださり誠に有難う存じます」
「いや、よい。私も興味を引かれたのでな」
にたりとその目を眇めて視線を投げる先には、ジョシュアではなくアリアナの姿。
凡そ親子のものとは思えぬ会話の内容に内心ひやりとしていた彼女は、先触れなく視線を這わされ思わず肩を慄かせる。
アリアナの様子を瞬時に覚ったジョシュアは、華奢な手を自らのそれで包み、ぎゅっと強く握り締めた。
そんな二人の様子を目の当たりにし、更に国王の瞳が愉しげに細められる。
隣に控える王妃に関して言えば、国王の様相をまるで苦虫を噛み潰したような顔付きで見つめている。
「……彼女は私の大切な女性です。未亡人ではありますが、それは関係ありません。我々は心より愛し合い生涯を共にしようと考えております」
「夫に先立たれたのならば、お前は良くともその女性の胸中は違うのではないか?」
「この場に参る前に互いの気持ちを確かめております。結婚を認められなくとも、私たちが共にあれるのならばそれで構いません」
「……ジョシュア。私は本人に直接問うておる」
低い声は何の感情すらも読み取れないように思えた。