レンダー・ユアセルフ
交差した視線の先。捉えた色素の薄い瞳がゆっくりと揺れ、アリアナの其れを受け止める。
「……仮に認められなくても、君と離れるなんて頭にも無かったよ」
「周りで、有る事無い事吹聴されていたかもしれないわ」
「関係ないよ。僕にはアリアナが全てだから」
直球で向けられるその言葉に、女性は普通飛び上がるほどの嬉しさを噛み締めるのではないだろうか。
ジョシュアは端整な顔立ちをしており、態度もこの上なく紳士的だ。そんな男性にストレートな愛の言葉を貰えるとあらば、恥じらいに頬を染めることが自然の筈なのに。
……それにも関わらず、女性としての歓びが己の内に無いことがアリアナ自身不思議でならなかったのだ。そのため彼に対する罪悪感がふつふつと膨れ上がる。
勿論、幼馴染に求められたことから湧き出る嬉しさは感じられる。しかしながら彼女が見付けられなかったものは、異性的、恋愛的な意味合いをもつ其れだ。
「ありがとう、ジョシュア」
僅かでも胸の高鳴りでも感じられれば良かったものを。これから未来を共にするというのに、ジョシュアを愛していくと決めたばかりなのに。
彼女は、彼を男として見ることができない自分に気付いてしまったのだ。
──ジョシュアが年下だから?それとも、長らく付き合いを続けた幼馴染だから…?
そんなことが理由だとは思えない。混乱の坩堝に引き込まれながら、覚られまいと笑顔を見せたアリアナを、ジョシュアは曖昧な笑みで見つめ返していた。