レンダー・ユアセルフ





「(この選択は…間違いだった…?)」




己の保身のみを顧みてジョシュアの手を取ったことに違いはない。しかしながら、ジョシュアを恋愛の対象として見ることのできていない現状に嫌でも焦燥が増していく。

幼馴染として大切な存在なのだから、傍に居ることはできるだろう。

けれど、あんなにも情熱を向けてくれたジョシュアに対しアリアナの感情が彼とは別にあるということは、余りに不誠実な気がしてならなかった。





ふと思い起こすのはあの、金髪に碧眼の性悪男。いつでも強気に物事を見据え、何事も己の思いのままに操ることを得意とする軍国唯一の絶対的王子。

ジーファを思い出すたびに掻き乱される心中は不快ゆえの感情だと信じて疑わなかったアリアナは、伴って生じる胸の痛みの原因が解らず途方に暮れた。





「アリー様」





いつの間にか部屋へと戻っていたらしいミーアに呼び止められ、はっと我に返る彼女。

そしてこの城の女中である彼女も災難を被った内の一人であることに軽く目眩を催す。後ろ向きの考えに支配されるがゆえに、アリアナは己の存在意義さえも見出せなくなってきていた。







「……ミーア。ごめんなさい。私が来たせいで、余計な仕事を増やしてしまって」







指をあてれば、今も眉根に寄っている皺を自覚する。こんなにも難しい顔をしていては、余計な仕事どころかミーアの気分さえも下向きにしてしまうだろう。


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