レンダー・ユアセルフ
「お疲れ様。紅茶淹れようか?」
自然に振る舞えている筈。どんな形であれ、ジョシュアが彼女にとって大切な存在であることに変わりはないのだから。
しかしながら努めて笑んだアリアナを見る彼の瞳は、痛々しげに歪んでしまう。
「……ん、大丈夫だよ。それより疲れたでしょ?今日はもう休んだら?」
「でも…」
「もしかして誰かに変なこと言われた?……他の人がどう思ってるのかは知らないけど、僕はアリアナを愛人にしたいわけじゃないよ」
──ガツン、と。彼女は鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。
「一緒に居られればそれでいいんだ。それだけが僕の、幸せだから」
ジョシュアという青年は、何と悲しく微笑むのだろう。言葉とは裏腹に、まるで今にも泣きだしてしまいそうな表情が彼女の罪悪感の成長を促していく。
「……ジョシュア」
「とにかく今日はもう休みなよ。僕も自分の部屋に帰るから」
背中を見せる彼は言葉通りこの部屋から出て行ってしまうのだろう。そうなると、焦るのはアリアナだった。
「本当にそれでいいの?ジョシュアの望みは、それだけなの?」
一体何を言っているのか、自分でも自身の発言に頭が追い付いていかない。けれど考える前に声を張り上げてしまったあたり、違うこと無くそれが彼女の本音なのだろう。